「ねぇ、ユカのこと、どのくらい好き?」

背中を掻きむしりたくなった私はついチラリと背後を見てしまった。
見たところ十代。予想通りではあったけれど、にわかに我が身の現実が跳ね返ってきて虚しくなる。
こんな年齢の子たちが当たり前に恋愛しているのに、私は一度も経験していない。

そんな背中にヒソヒソ声が刺さった。

「ほらぁ、オバサンに睨まれちゃったじゃん」

オバサン……。
白目になったところで店員の底抜けに明るい声が響いた。

「お待たせしました! ご注文をどうぞー」

ほんの十秒前まで私は普通に一人分を注文するはずだった。でも私が負けん気を起こすとろくなことがない。私の口は大見栄を切っていた。

「黒糖タピオカミルクティーを二つ! 持ち帰りの紙袋でお願いします」

〝二つ〟の部分で声がやたらに大きくなってしまった。今ここに姿はなくても、〝オバサン〟にだって相手ぐらい……いない。

コンビニでチューハイを二つ買ってしまうことはよくある。私が一人飲みであろうとなかろうと店員にはどうでもいいことだとわかっているのに、背中に〝干物〟と大きなゼッケンを貼っているような気がするのだ。自意識過剰な女は生きにくい。

「お持ち帰りのお時間はどのぐらいでしょうか」

「二時間でお願いします」

ここで私はうっかり正直に答えてしまった。

「……かしこまりました!」

少し驚いた顔をした店員はすぐに笑顔で応えてくれた。でも背後からはクスクス笑う声が聞こえてきた。笑われた理由はわかっている。