次にデパートに寄った私の足は、気づけばやっぱりファッションフロアから食料品売場に向いていた。精肉売場を見た後、惣菜コーナーでどんなミートデリカが売れているのかを観察する。

それから和菓子売場の前で立ち止まった。

差し入れも貰ったし、長期休ませてもらってるし、精肉部のみんなに何か差し入れを届けたいな。矢部さんって意外と和菓子なんか喜ぶんじゃないかな……。
夜の清掃を担当しているアルバイトさんの分も余裕をみて大きめの箱を買い、デパートを後にする。

でもせっかく遠路はるばる都内に来たのに大した収穫がないことが惜しくなり、ふと目についたタピオカ店に並んだ。ブームが去ったとはいえ結構な行列だ。

そういえば柳井君はミルク味のお菓子が好きだからタピオカミルクティーも好きだろう。この店は埼玉に出店していないし、喜んでくれるかも。

(いつも励ましてもらってるし、何かお礼したいな……)

「もう……こんな場所じゃダメだってばぁ」

その時、耳障りな声が脳内に割り込んできた。いつの間にか私の後にカップルが並んでいたようだ。

「ユカ可愛すぎ」

甘ったるい台詞とともにチュッという音まで聞こえ、ストレス値が跳ね上がった。耳栓代わりにイヤホンをつけても、不快な音ほど脳内バリケードを突破してくる。