「暇だ……」

部屋の掃除は済んだし、趣味の勉強──今は秋にあるTOEIC対策問題集が目下のネタだけど、それも三回も繰り返してしまった。新聞はもう隅から隅まで、興味もなかった川柳コーナーまで読んだ。
ちなみにネット嫌いの私は昭和のサラリーマンよろしくいまだに紙の新聞派だ。

今日は六日目の金曜日。
朝からいい天気で、小次郎の散歩もさきほど行ってきた。近所の空き地で日光浴をして好物のクローバーをたらふく食べた小次郎は満足そうに寝床にもぐりこみ、すっかり寝る態勢だ。

「久しぶりに服を買いに行こうかな」

考えてみたら左遷されて以来、都内に行っていない。この三か月は休日と言えば泥のように寝ていた気がする。このままでは田舎で朽ち果てそうだ。安静期間も過ぎたことだし、夏のセールに参戦してみよう。

「よーし、行こう!」

クローゼットを開け久々に海外物の服を取り出すと気分が上がる。
タママートに勤め始めてからの服装は実用本位で、チュニックにスキニーパンツというスタイルに落ち着いている。作業着は男女兼用のダボダボで、出勤着を下にそのまま着ていることが多い。冷凍室に入ることが多く、厚着していないと寒くて一分と居られないのだ。

電車に揺られること一時間半、まず表参道に──北条怜二がいる丸の内からできるだけ遠くと考えたらそうなった──降り立った私は久々の都会の空気にわくわくしながらブティック巡りをした。でも素敵な服がいくつも見つかったのに、なかなか買うまでに至らない。

理由は動きにくいから、保温性がないから。

結局、気に入っていたお店をすべて回っても、何一つ買い物をしなかった。