アパートに着くと、彼が私のバッグを持って玄関まで送ってくれた。
玄関ドアにはタママートのロゴが入ったビニール袋がかけられていた。お弁当やお茶、野菜ジュースなどが透けて見えている。当面手が使えないことを心配した精肉部のみんなからの差し入れだろう。

「明日以降は傷病休暇扱いになりますので欠勤の連絡は不要です。いつまでなのかは決まり次第連絡があると思います」

そう言いながら彼がドアのビニール袋を取り、鍵を開けてくれる。

「送っていただき、ありがとうございました」

玄関の土間でバッグを受け取ると、私は視線を下げたまま彼に深々と頭を下げた。

「……いろいろとごめんなさい」

この異動自体も、今も。

「あなたが謝ることは何もありませんよ。この数か月、本当に立派でした」

それを聞いた瞬間、これまでずっと耐えてきたのに、私の顔は俯いていても隠しようがなくぐしゃっと潰れた。
狭い玄関、体温すら感じてしまえるぐらいの距離。
早く一人にならなければ──今だけは戦車でいたかった。