結局、傷は六針縫い、後日また消毒に来なさいということで帰された。医師から言い渡された安静期間はとりあえず五日間。

診療時間はとっくに終わっていたので医院の駐車場には一台しか車が残っていなかった。洗練された輸入車だ。彼は一度自宅に寄って自分の車で来たようだった。

「タクシーより自由がききますから」

助手席のドアを開けてくれる彼に恐縮したのと右手の傷を庇ったせいで、車に乗り込む動作が少々不格好になってしまった。車内は仄かにいい香りがしていて、消毒液と包帯の匂い漬けになっていた私は生き返ったように息をついた。

「お昼以降、水分は?」

「いえ……忙しかったので。でも平気です」

それでも彼は「待っていてください」と言い残して車を離れ、コーヒーを手に戻ってきた。

「疲れているでしょうから、とりあえず甘いものを」

彼がキャップを開けて手渡してくれたペットボトルに口をつける。ミルク濃いめの甘味が喉と身体に染みていく。その時ようやく自分がひどく疲れていたことを知った。

「美味しい……」

「よかったです」