まずは挽肉から。合格する自信はない。大学入試だって就職試験だって強気に挑戦してきたのに。
負け戦に挑むのがこんなに情けない気分だなんて、今まで知らなかった。ミートチョッパーの前に立つ足が少し震えている。

「ミニからいきましょう。十二パック詰めてください」

ストップウォッチを持った船井SBが指示を出す。
受け台にミニパックの包材を十二個並べるだけの準備段階なのに、見られている緊張のせいでもたついてしまう。単純すぎる作業も、それすらもたつく自分も、恥ずかしくてたまらない。

「では始めてください」

粗挽き肉をバットから掻き出しながらフットペダルを踏む。
ふんわり丸く、美味しそうに見えるように。
でも形に気を取られすぎて、気づいた時には手のひらの挽肉は初心者にもわかるぐらいはっきりと重量オーバーしていた。
慌てたせいでフットペダルの操作が遅れ、ボトッと挽肉の塊が台の上に落ちた。重量オーバーに加え、ミスがまず一つ。

三パック目まで進んだところで挽肉が出なくなる。粗挽き肉を追加するのを忘れていたからだ。次こそはと焦る間に十二パックはすぐに終わってしまった。

続いて中パック、大パック。どこかで挽回しなければと思うのに、二週間で覚えたことは緊張の前に呆気なく飛んでしまい、散々な出来だった。

SBから結果が告げられる。

「制限時間をオーバーしてしまいましたね。基準の重量に収まっているのは十二パックのうち五パックでした。残念ですが挽肉は再試験となります」

この時点で充分辛かったのに、鶏団子はもっと悲惨だった。そんな私を北条怜二はただ眺めている。どんな顔をしているかなんて見る余裕も勇気もない。

どうしてこんなことをしなくちゃいけないの?
これに何の意味があるの?
肩叩きじゃないの?

抑えても抑えても、今まで何度も飲み込んできた問いがまた浮き出てくる。
彼が見ていなければ、ここまで辛くなかったのに……。