「それで梶山茜はどうなったの?」

『店長が注意しても通じないんだって。菱沼の社員だからって遠慮があるのかな? 腫れものを触るみたいに遠回しにしか言わないせいもあるみたいで』

美保子の話を聞きながら遠い目になる。
私なんて毎日矢部さんのサンドバッグになっているのに何だろう、この差は。

『仕方なく北条課長が出向いて直々に注意したらしいのよ』

なるほど、それがあの時か。
〝折り入った話〟が叱責だったとわかり、梶山茜にバカにされた私はついニンマリしてしまった。
でもそれはほんのわずかな間で終わった。

『そしたら梶山茜が北条課長に〝辛い、辞めたい〟って言って、さめざめと泣いたんだって』

「何それ!」

元々男性の前では態度が変わるし女の武器を使うタイプだから、目に浮かぶようだ。

「で、どうなったの?」

『それがね、北条課長が引き留めたらしいよ! 梶山茜本人が友達に語ったところによると、すごーく優しく慰められたって』

「…………」

私の手からマッサージローラーがゴロンと落ちた。
拾って再びコロコロし始める。でも同じところばかりマッサージしていることに気づき、ローラーを置いた。

何だろう、この感情。