「やべぇ、汚ねー。靴底洗わないと」

柳井君の独り言につられて自分の足元を覗き込んだ私は挽肉だらけの靴裏を見て溜息をついた。理想も何も、現実はこれだ。

高校時代の友人たちには私が左遷されたことを言っていない。友人たちに嘲笑されることを考えると、ずっと言えないだろうなと思う。そんな自分を不甲斐なく思いつつ、振り切ることができなかった。

午後の作業も相変わらず怒鳴られ続けるのだろう。
その先に何がある?
私には目指すものが見えない。

(やっぱり辞めたいな……)

仕事は必死でやっている。
でも柳井君には申し訳ないけれど、気を抜くとそんな思いがふわっと浮き出てくる。

「そろそろ戻ろうか」

口の中のチョコかすっかり溶けてしまうと、柳井君に笑いかけながら立ち上がった。