「とにかく丸めるんだよ」

やはり矢部さんの説明は雑だった。
団子といってもタネは緩くベチャベチャで、球状にするのはかなり難しい。

「ほら、こうだよ、こう! わかんないかね?」

ちっともわからない説明のうえ、一足飛びに一人前レベルを求めてくる。

「一個二十グラムだからね。でも計るんじゃないよ!」
「遅い!」
「何これ、こんな不格好な団子、誰も買わないよ! やり直して」

せっかく握った団子はベチャッという音とともにトレーごとボウルにぶちまけられた。跳ねたタネのしぶきが頬に飛ぶ。これってパワハラではないだろうか?


「仁科さん、ほら、オムレツにケチャップかけますよー」

お昼の社員食堂でぐったり項垂れていた私は、柳井くんの声でようやく顔を上げた。

「矢部さんは初日から要求が高すぎですよ。僕らは新入社員研修で練習できたんですけど、仁科さんはいきなりですもんね。研修では慣れるまで秤を使って重さを確かめろって言われましたよ」

「そうだよね? あそこまで怒鳴らなくてもいいのに」

「今まで一週間以上耐えた人がいなかったんですよ。仁科さんは続いてるから、きつく言っても大丈夫だと思ってるみたいです」

「全然大丈夫じゃないんだけど」

力なく答え、オムレツをつつき始める。