でも笑いを収めた彼の次の言葉を聞いて一気に白けた気分になった。

「梶山さん、ちょうどよかったです。少々お時間を頂いてよろしいですか? 折り入って話がありますので」

「あっ、はい!」

梶山茜が飛びつくようにして嬉しそうに答える。

「では仁科さん、僕はここで失礼します。帰りの運転、お気をつけて」

運びましょうって言ってくれたのに。もう用事は終わった、帰社するだけだって言ってたのに、〝折り入った話〟って何よ。
自分から荷物の運搬を断ったくせに、思いきりへそを曲げる。

「北条課長もお気をつけて。では失礼いたします」

まあ勝手にすればいい。澄まして二人に会釈したけれど、この格好ではあまり決まらない。止めていた台車のストッパーを作業靴の爪先で外すと、ガキーンとけたたましい金属音が響いた。

「私たちは休憩室でお話します? あっ、お昼がお済みでなかったら、よかったらご一緒しませんか?」

梶山さんのはしゃいだ声を聞きながらぐいぐい台車を押す。
そうよ、早くバイバイしたかったんだからこれでいいのよ。
今度こそもう二度と会わないんだから。

ところがいくらも進まないうちに背後から彼の声が響いた。

「そうだ、仁科さん」