「北条課長、フォローに来てくださったんですね」

梶山茜の嬉しそうな声が私の気にしていたポイントをぐりぐり踏んづけた。
そこで彼女は北条怜二の隣に立つ作業着女の正体に気づいたようで、まじまじと私を眺め始めた。

「もしかして……ファッションビジネス部の仁科さん?」

梶山茜はわざとらしく小首を傾げてからプッと吹き出した。
何よ、目クソ鼻クソじゃないの。二人とも所詮タママートなんだから。

「今はタママートかもめ店精肉部ですが?」

私が腕組みをしてふんぞり返ると、隣で北条怜二までが吹き出した。

(どうして笑うの?)

まるで仮装大会で一人だけ貧乏くじを引いたみたいだ。
むっとして隣を見上げた私は、彼が目尻に寄せた笑い皺に一瞬だけ目を奪われてしまった。

この人、こんな顔するんだ──。