ゴミを捨て、教えられた社用駐車場に行ってみるとタママートのオリジナルゆるキャラが描かれた古いワゴン車が停められていた。さらにテンションが下がる。

「格好悪……」

しかし道路に出るとそれどころではなくなった。ナビは私がペーパーであることなどお構いなしに交通量が激しい片側三車線の幹線道路を指示してくる。

「キープレフト、キープレフト……ああ、またーっ」

四角四面にしか行動できないのは運転も同じだった。教習所の教えを念仏のように唱えながら左車線を死守していた私は、路上駐車のせいで何度も悲鳴を上げた。車線変更という最高難度の技を余儀なくされ、クラクションを鳴らされること数回。

「なに、この差……」

命からがら到着し、ヨロヨロと車から這い出た私は久我店の規模に目を見張った。かもめ店の数倍は大きい。店舗の造りもとても綺麗だ。その格差に少しへこんだあと、溢れかえる駐車場を見て考える。こんな大型店舗だと、どれだけ唐揚げ肉を切らなきゃいけないのかを。

「無理だわ……」

やっぱりかもめ店でよかった。あれでも無理なのに。

志低く納得すると、ガラス越しにさりげなく店内を覗いてみる。
奥にあるカウンターには紺色のスーツを着た女性がいて、キャビンアテンダントみたいに首にスカーフを巻いている。ワインや高級ギフトなどのアドバイスも担う接客スタッフで、弱小かもめ店には配置していない職種だ。ほんの少し敗北感。

「ふーん」

小さいけど、かもめ店だって頑張ってるんだからね。
自分ではこきおろしているくせに他店に負けるのは気に入らない。

帰りが遅れると矢部さんに叱られることを思い出した私は偵察をやめ、通用門に回った。
久我店はかもめ店と違ってバックヤードもピカピカで広大だ。少しまごついてしまい、とりあえず事務室を目指す。

しかしそれが間違いだった──というか、この日この時間この場所にやってきたこと自体、運が悪いとしか言いようがない。