「ちょっと! 着替えて行くつもり?」

「え? そうですけど……」

善は急げと給食帽を脱ぎながら部屋を出ていこうとしたら、矢部さんに怒鳴られた。

「何言ってんの? そのまんまだよ! チャラチャラしてる暇なんかねぇんだ」

タママートの他店相手にチャラチャラしようなんて思っていない。この格好で公道を走るのが恥ずかしいだけだ。まあ、こんな田舎に見られて恥をかくような知り合いもいないけど。

「あと、そこのゴミ捨ててきて! 今日は精肉部がゴミ庫掃除の当番だからね。帰ってきたらすぐやってよ。忙しいんだから早く行きな!」

「はい」

呼び止めたのはそっちなのに。内心でブツブツ言いながら、ずしりと重いゴミを運ぶ。

ゴミ庫は建物の裏手にあって、各部門が当番制で清掃している。他部門の掃除役は交代なのに、精肉部だけは矢部さんにより『アンタがやるに決まってんだろ』と指名され、私固定だ。同じく当番制のトイレ掃除も然り。

矢部さんは過去に何かあったのか、『大卒なんざ使えねぇくせに社会でツラがデカい』と目の敵にしていて、私のことは徹底的に叩きまくるつもりらしい。