心の中で退職退職と唱えながらサミ作業をやり直していると、佐藤主任の素っ頓狂な声が響いた。

「うわぁ、やべぇ!」

どうやら先ほど到着した昼便にあるはずの包材がなく、調べてみたら昨日の発注から漏れていたらしい。

「昨日発注やったの柳井君? あ、俺か! マジかマジか」

珍しいことではないらしく、柳井君は苦笑い、矢部さんは作業しながらフンと鼻を鳴らしただけだ。
こういう場合、余剰のある近隣の他店から買い取る形で分けてもらうらしい。

「えっ、ある? 助かったー! サンキューサンキュー、すぐ取りに行くよ」

何軒目かの電話でオッケーをもらえたらしく、佐藤主任が大声で礼を言っている。すると矢部さんがつかつかと私のところにやってきて顎をしゃくった。

「行ってきな」

「えっ? あ、私ですか?」

「役立たずが抜けても変わんねぇし」

「…………」

「三つ隣の久我店だよ。車の運転ぐらいできるでしょ」

免許はあるけれどペーパーだ。ちなみに学科は完璧だったけれど終検を三回、卒検は二回落ちた。

「まさか運転もできないとか言わないだろうね」

「できますよ!」

矢部さんの舌打ちを聞いて意地を張る。首都高でもあるまいし、トラクターが走るような田舎の農道ぐらい楽勝……であることを祈る。