「大企業はスゲーなぁ。社員の利き手まで管理されてんだ?」
「いえ、それはたまたまで」
「いつまで喋ってんの」
小さい婆さん改め矢部さんの声で再び部屋に緊張が走る。矢部さんは口元を皮肉に歪め、私をジロリと睨み上げた。
「仁科さんさぁ。アンタわかってないみたいだけど、ここはダラダラ喋ってる暇なんかねぇんだよ」
いや、喋ってたのは私じゃない。
そう思うのに、蛇に睨まれたカエルのように声が出てこない。
矢部さんは私の菱沼オフィス仕様の服装をじろじろ眺め、小馬鹿にしたように鼻で笑った。
「ま、すぐにわかるだろうさ」
気づけば佐藤主任も柳井君も蜘蛛の子を散らすように自分の持ち場の作業台に戻っている。
「ほら、何突っ立ってんの! 女子更衣室の場所を教えるからついてきな、早く! 忙しいんだよ!」
「は、はいっ」
どうしてこんな横暴な婆さんにヘコヘコしなきゃいけないの。
どうして〝はい〟なの、辞めるんでしょ?
内心では猛抗議しているのに、私は大慌てて矢部さんの背中を追ったのだった。
「いえ、それはたまたまで」
「いつまで喋ってんの」
小さい婆さん改め矢部さんの声で再び部屋に緊張が走る。矢部さんは口元を皮肉に歪め、私をジロリと睨み上げた。
「仁科さんさぁ。アンタわかってないみたいだけど、ここはダラダラ喋ってる暇なんかねぇんだよ」
いや、喋ってたのは私じゃない。
そう思うのに、蛇に睨まれたカエルのように声が出てこない。
矢部さんは私の菱沼オフィス仕様の服装をじろじろ眺め、小馬鹿にしたように鼻で笑った。
「ま、すぐにわかるだろうさ」
気づけば佐藤主任も柳井君も蜘蛛の子を散らすように自分の持ち場の作業台に戻っている。
「ほら、何突っ立ってんの! 女子更衣室の場所を教えるからついてきな、早く! 忙しいんだよ!」
「は、はいっ」
どうしてこんな横暴な婆さんにヘコヘコしなきゃいけないの。
どうして〝はい〟なの、辞めるんでしょ?
内心では猛抗議しているのに、私は大慌てて矢部さんの背中を追ったのだった。
