ところが翌日、私は古ぼけた建物を茫然と見上げていた。
「これ……?」
タママートかもめ店。スマホのマップアプリは確かにそう言っている。しかし目の前の建物はネットで見た画像とはずいぶん違っていた。
お洒落な──というのはもはや過去形のサンシェードは紺色ではなく、使い古した手ぬぐい色だ。近寄ってよく見ると破れたのを修繕してあるのがわかる。外壁は写真の通りクリーム色ではあるものの、いたるところに黒い汚れがシミになって垂れている。
それより驚いたのは、隣の敷地にタママートかもめ店の三倍はあろうかという大きなスーパーがデンと建っていることだった。どう考えてもタママートが負け戦を挑んでいるようにしか見えない。
「よく潰れずにいるわね……」
失望を通り越し、妙なところで感心する。
違う系列のコンビニが至近距離で営業しているのはよく見かけるけれど、客の取り合いかと言えばそうでもなく、むしろ集客効果があると聞いたことがある。そういうものなのかもしれないと無理やりこじつけ、気を取り直して店内に入った。
だが、しかし。
