理想の結婚お断りします~干物女と溺愛男のラブバトル~

美保子は同じ大学の法学部出身で、菱沼ホールディングスの法務室に勤務している。私と違ってちゃんと相手を見つけ、昨年結婚した。。
女子校時代のコミュニティはいまだに続いてネチネチした闘いを繰り広げているけれど、入社して仲良くなった美保子はいわばピンで、私にとって一番心を許せる存在だ。

「お洒落なカフェとか、何もないの! トラクターが道路を走ってるんだから」

かといって心が解き放たれるような雄大な田園風景が広がっているわけでもない。駅前はチェーンの居酒屋やカラオケ店が雑然と固まっていて、昼間に見る看板はところどころ電球が落ちている。ついでに私の部屋の窓から正面に見えるのはパチンコ店の廃屋だ。

『そんなに埼玉をバカにしてたらもっと奥地に飛ばされるかもよ。人事の北条課長、埼玉県民よ』

「うそ。汐留のタワマンにでも住んでるのかと思ってた。イメージ的に」

『埼京線か何かよ。どこの駅かは知らないけど』

「ふーん……。どこだろう」

いくら孤独でも北条怜二には出くわしたくない。