理想の結婚お断りします~干物女と溺愛男のラブバトル~

失敗のリフレインから逃れようと作業に没頭するうち、地価が安いせいで都内より広い間取りの住まいはすっきりしすぎて寂しいぐらいになった。

家具を買い足そうか? 
でも私、ここに長居なんかしたくない……。

いつの間にか日が暮れて薄暗くなった窓の外は明かりもまばらで、心を慰める夜景も人混みに紛れて孤独を癒せるカフェもない。

「小次郎―……そうだ、寝てるんだった……」

手持無沙汰になってしまい、昼間の移動時にコンビニで買っておいたお弁当と缶チューハイを開けてフローリングの床に座った。一人で食事するのは東京にいた時と変わらないのに、無性に寂しい。
普段利用している宅配献立サービスは地区が切り替わる都合上、明日からのお届けだという。そんな当たり前の対応すらも見放された気分に拍車をかける。

「帰りたいよー……」

膝を抱えてメソメソしかけた時、がらんとした空間にスマホの着信音が鳴り響いて飛び上がった。まさか母親だろうかと恐る恐る画面を見ると、そこには菱沼ホールディングス同期入社の友人、加賀城美保子の名前が表示されていた。

「助かった……」

いずれは親にばれるのだけど、今は激変する生活を建て直すのに一杯だ。

「……もしもし」

『どうー? 新居は』

美保子の明るい声が耳元で響くと孤独が紛れて少しほっとする。

「どうって、最悪よ」

涙を拭いて咳払いすると、いつもの調子で返事した。