あの一回きりで私はアヒル口メイクをやめた。
「別に北条怜二に言われたからじゃないし」
うそぶきながら処分山に雑誌を乗せようとして、ついまた開く。
巻頭特集ページでは人気女優が蠱惑的な表情で微笑んでいた。甘く潤んだ目、ふっくらとした肉感的な唇。こんな顔で見つめられたら、そりゃ男はみんなコロッといくだろう。
「可愛い系の顔になりたかったなぁ……」
それから私はもう何度目になるのか、あの日の自分の失敗メイクを検証し始めた。
そう、ここに書いてある通りにやったはすなのよ。でもこの写真みたいな顔にならなくて、もう少し塗った方がいいのかなって……。
「うあああ」
雑誌を放り出して頭を抱える。やっぱり唇オバケだったかもしれない。
「ごめんね、女優さんみたいにならなくて!」
思い出す度にヒリヒリというかムズムズというか、悪態でもついていないと転げまわりたくなる。胸パッド事件まで芋づる式に出てくるのだから相手が悪すぎだ。
いや、公正に考えよう。面と向かってメイクやファッションの失敗を指摘してくれる人はあまりいない。だからあの指摘はありがたいのだ。そう、すごくありがたい、はずなのだ。
「……もう嫌だ」
ベッドに突っ込み、頭から布団を被って呻いた。
あの日からこの半月、私は何かにつけて北条怜二を思い出しては落ち込んだり腹を立てたりを繰り返している。傷を舐めたいのか塩をすりこみたいのか、自分でもわからない。
「まあ、もう二度と会うこともないし」
この独り言もここ半月繰り返している一つだ。
「別に北条怜二に言われたからじゃないし」
うそぶきながら処分山に雑誌を乗せようとして、ついまた開く。
巻頭特集ページでは人気女優が蠱惑的な表情で微笑んでいた。甘く潤んだ目、ふっくらとした肉感的な唇。こんな顔で見つめられたら、そりゃ男はみんなコロッといくだろう。
「可愛い系の顔になりたかったなぁ……」
それから私はもう何度目になるのか、あの日の自分の失敗メイクを検証し始めた。
そう、ここに書いてある通りにやったはすなのよ。でもこの写真みたいな顔にならなくて、もう少し塗った方がいいのかなって……。
「うあああ」
雑誌を放り出して頭を抱える。やっぱり唇オバケだったかもしれない。
「ごめんね、女優さんみたいにならなくて!」
思い出す度にヒリヒリというかムズムズというか、悪態でもついていないと転げまわりたくなる。胸パッド事件まで芋づる式に出てくるのだから相手が悪すぎだ。
いや、公正に考えよう。面と向かってメイクやファッションの失敗を指摘してくれる人はあまりいない。だからあの指摘はありがたいのだ。そう、すごくありがたい、はずなのだ。
「……もう嫌だ」
ベッドに突っ込み、頭から布団を被って呻いた。
あの日からこの半月、私は何かにつけて北条怜二を思い出しては落ち込んだり腹を立てたりを繰り返している。傷を舐めたいのか塩をすりこみたいのか、自分でもわからない。
「まあ、もう二度と会うこともないし」
この独り言もここ半月繰り返している一つだ。
