理想の結婚お断りします~干物女と溺愛男のラブバトル~

「泣いてるんですか」

私の顔はもう否定しようもなく濡れている。
頭の中で泣いている言い訳を一生懸命考えた。

「お正月のお餅、買えてない」

どうして私はこんなどうでもいいことを言ってるんだろう。
袋を掲げて彼が言う。

「お餅も、あなたの好きなチューハイもありますよ」

それでもまだ信じられなくて、私の口はおかしなことを言う。

「でもお雑煮の作り方がわからない」

「僕が作りますよ」

それは明日の朝を一緒に迎えられるってこと。

こんな時、なんて答えたらいい?
頭の中をかき回しても、すべて寂しさと一緒に吹き飛んでしまって何も出てこない。

ようやく私の口から出てきたのは。やっぱりいつもの私らしく可愛くなくて、色気もなくて、でもほんの少しだけ素直になった言葉だった。

「だったら一緒に飲んであげてもいいよ」

彼が笑い、私も笑う。
二人の白い息のはるか頭上で、また一つ鐘が鳴った。


埼玉辺境おんぼろスーパーのちょっと臭いゴミ庫の前、
初めて好きな人と聴く除夜の鐘。

干物女二十八歳。理想の結婚は夜空の星のようにまだまだ遠い。
でも今、私はたしかに恋をしている。




fiin.