理想の結婚お断りします~干物女と溺愛男のラブバトル~

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「終わった……」

午後十時半。
誰もいない更衣室で作業着を脱ぎ、大きな溜息をつく。これまでの人生で一番大きくて、一番ほっとしていて、一番達成感のある溜息かもしれない。

社会の片隅の、取るに足らないちっぽけな奮闘。菱沼で手掛けていた事業とは比べ物にならない。この店があってもなくても、世の中は変わらず回っていくだろう。

でも今の私には感慨深かった。店長の速報を聞いた時はまだ最終商戦の最中で喜ぶ暇はなかったけれど、誰もいない更衣室にいるとここに来た初日のことが思い出され、しみじみと噛みしめた。

でもしばらくすると床の冷たさで身体が凍えてきた。それとともに、ここしばらく仕事で紛れていた失恋の痛みがまたしくしくと胸を浸し始める。