理想の結婚お断りします~干物女と溺愛男のラブバトル~

そのあともいろんなお客様に声をかけられた。田舎の主婦たちは温かい。
ここに来た数か月前は上から見ていた。ここにいる自分を恥ずかしく思っていた。今だって、こんなことに熱くなっている自分が滑稽でもある。

でも、ひとりぼっちの帰り道に歌声を聴かせてくれたカエルたちに来年の夏も会いたいなと思う。小次郎の散歩中、いつも畑のカブの葉をちぎって食べさせてくれるお婆ちゃんもいる。遠出してみたいから、いつか自転車を買いたいなと思う。頑張る理由はシンプルで、この店にもこの町にも、さよならを言うには早すぎるのだ。


「あれ? 矢部さん⁉」

ギフト売場の商品がかなりはけたので精肉部の作業部屋に戻ると、矢部さんが段ボール箱に腰かけて何やらがなり立てていた。

「柳井君! さっき売場見たら国産豚バラしゃぶしゃぶが残り一パックだよ。あと豚ロースしゃぶも五つ追加、急ぎなよ」

呆れ返っていると、矢部さんは私にももれなく指示を飛ばしてきた

「何突っ立ってんの? お雑煮の鶏小間がもう少ないよ。早く切って」

「何しに来たんですか? 邪魔しないで家で寝ててください」

「まあまあまあまあ」

いつものように佐藤主任が割って入って揉めていると、店長が精肉部の部屋に駆け込んできた。

「速報! 午後五時集計で、目標達成したよ!」

「えっ?」

全員の動きが止まる。