理想の結婚お断りします~干物女と溺愛男のラブバトル~

「店員さん!」

ポンと肩を叩かれ振り向くと、クレームおばさんだった。男四人のお正月準備は大変らしく、おばざんのショッピングカートにはビールやズワイガニでてんこ盛りになっている。

「クリスマスの照り焼き丼、うちの男共に大好評だったのよ」

「ええっ、ありがとうございます! すごく嬉しいです」

「あれ、普段も売ってくれないの?」

「それがクリスマスだけなんですよ」

チキンの話が終わると、おはさんは私の格好をしげしげと眺めた。

「今日はすごい格好ねぇ。お隣が大きいから大変でしょ」

「そうなんです。なりふり構っていられないんですよ」

「ここだけの話、私はこっちが好きよ」

おばさんは声をひそめて笑い、特設の棚を指さした。

「これは何? お正月用?」

「そうです。ローストビーフ、角煮、あとパストラミとか。ちょっとお値段は張るんですけど、味は間違いないです」

「たまには贅沢してみたいわねぇ」

おばさんはしばらくあれこれ見たあと、五千円のグルメ詰め合わせを選び、人のいい笑顔を見せた。三百円の鶏団子を高いと言っていたのに、ありがたくて何度お礼を言っても足りない。

「来年もよろしくね。クリスマスはまたあの丼にするからね」

思わず涙ぐみそうになった。来年、この店はあるのだろうか。それがあと数時間で決まる。

「はい、どっさり作ってお待ちしてます。どうぞよいお年をお迎えください」