理想の結婚お断りします~干物女と溺愛男のラブバトル~

精肉部の部屋に戻ると、みんな売り場のどこかに出ていたようで誰もいなかった。
でも冷蔵室のドアが開け放しになっている。閉めようと思って近づいてみると、室内に矢部さんが担当しているローストビーフサラダの箱がひっくり返って散乱しているのが見えた。不審に思い、中に足を踏み入れた私はぎょっとして飛び上がった。

「矢部さん!」

散乱した箱の山の向こう側に、矢部さんが倒れていたのだ。

「矢部さん、しっかりしてください」

「……大丈夫」

意識はあるようでほっとしたものの、助け起こそうとすると矢部さんは呻き声を上げた。

「腰だよ腰……ぎっくり腰だよ。箱をまとめて持ち上げようとしたら、やっちまった」

矢部さんの顔は白い作業着と同じぐらい蒼白で、額には脂汗が浮いている。私はぎっくり腰の経験がないのでどう手当てすればよいのかわからず、オロオロするばかりだ。

「誰か呼んでこないと」

「大丈夫さ。みんな忙しいし、アタシだって倒れてる暇なんかねぇんだから」

そう言いながら矢部さんは腕を上げることすらできずにいる。その様を見て思い出した。この半年、何度も矢部さんに呪いをかけてきたことを。

「す……すみません……!」

「何が」

「実は、ぎっくり腰になってしまえって、何回も呪いを……」

「わはは、アンタねぇ! ……うう」

吹き出した矢部さんが呻き声をあげて悶絶した。笑うと腰に響くらしい。懺悔はあとにして、とにかく早く冷蔵室から出してあげないと身体が冷えてしまう。