理想の結婚お断りします~干物女と溺愛男のラブバトル~

「拾わなくていいよ! 使うこともうねぇんだから。廃店なんだからさ。アンタだって廃店になればせいせいするんでしょ。帰れるなら万々歳じゃん」

「何言ってんですか」

言い返しながら床に落ちた包みを搔き集め、立ち上がった。

「廃店なんか望んでませんよ。そんなに同僚が信じられないんですか? だからみんな辞めるんですよ」

「何だってぇ?」

「まあまあまあまあ!」

つい本音をぶちまけてしまった私に矢部さんがさらにキレたところで、佐藤主任が慌てて止めに入った。その背後では蹴っ飛ばされた可哀想な包材が再び八つ当たりされないよう、柳井君がせっせと棚に上げている。最大の衝突を起こしてしまったけれど、精肉部の面々らしいそれぞれの動きに内心可笑しくなってしまった。

 でも矢部さんはそれどころではない。

「半年しかいないアンタにはわかんないだろうさ。社員も、みんなだよ」

そう言い捨て、値引きのバーコードリーダーを持って売り場に出ていった。
自棄を起こしていても、そのはけ口は仕事に向ける。言っていることも態度もひどいのだけど、いつだって一生懸命な矢部さんを心底嫌うことはなかった。

もし廃店になれば、店じまいと廃店処理が終わるのは春頃。そうしたらここのみんなとお別れになるのだと思ったら無性に寂しくなる。

「ごめんなさい。言い過ぎしまって……」

「いやいや。たまには言っちゃっていいと思うんで」

「そうそう! いつも怒ってる人だからね。俺ら怖くて言えないもんなー?」

柳井君のフォローに佐藤主任も同調する。

「あの人、自分ひとりでこの店を回してると思ってるからなぁ」

でも矢部さんの言う通り、半年しかいない私にはこの店への矢部さんの情を完全に理解できていないのかもしれない。

「どっちにしても包材を蹴るのはダメっすよ」

「でも……捨て鉢になるぐらい悔しいんだろうね」

「勤続二十年だもんなぁ」

三人で顔を見合わせ、溜息をつく。

「参ったねぇ……。あと十日、やるだけやるしかないね」

割り当て表をコルクボードに貼りながら佐藤主任が呟いた。