理想の結婚お断りします~干物女と溺愛男のラブバトル~

「アンタさぁ」

「はっ、はいっ」

微妙な間合いのあと話しかけられ、反射的に背筋が伸びる。

「鶏団子買って帰ってんだね」

「あ、はい……」

鶏団子の試験は終わってもまだ私は買い続けている。鶏団子だけでなく、他のいろいろなものも。今月から宅配献立サービスをやめて、料理を始めたのだ。

作業に慣れて売場に出て接客する余裕が出てくると、お客様に味や調理法について訊かれることが増えてきた。

『息子が独立して老人二人になると、あまりお鍋をしなくなっちゃったの』

お鍋以外にどんな料理にしたらいいかしら、と鶏団子の前で迷うお婆ちゃん。

『これ、子供に食べられる辛さですか?』

タンドリーチキンの半調理パックを手に訊いてくる若いお母さん。

そのどれもに自信をもって答えたいなと思う。今の私では日々台所に立つ主婦たちには遠く及ばないのだけど、せめて自分たちが売っている商品の味は確かめておきたいし、できれば調理法も提案できるようになりたい。丸の内のランドマークでも辺境のスーパーでも、プロ意識は同等だと思う。

まあそれと、北条怜二にコンビニ酒販コーナー状態の冷蔵庫を見られたことを悔やみ、今さらながら料理上手になりたいと思ったからでもある。