会話が終わる気配を感じ、引き延ばさないと彼が行ってしまいそうな気がして、私は思い切ってあの日の話題を出した。

「あの……先日はありがとうございました。パーティ―のことも、その、診療所に連れていって下さったことも」

「すぐに熱が下がったようで良かったです」

表情も言葉も優しいのにどこかよそよそしいのは、ここが仕事の場だからだろうか。

でも本当は私の熱が下がったのを見届けてくれたんでしょう? 
その優しさに期待したいのに。
あの演技の夜みたいに〝僕個人の行動〟で踏み込んできてほしいのに。

なのに、彼が口にした言葉は話題を引き戻し、綺麗にまとめて終えるものだった

「あの脅しがなくても、あなたは最高スコアで合格したでしょうね。信頼していました」

それって、やっぱりあの言葉は最初から冗談でしかなかった、ということ。
守る義務が発生しないとわかっているから言えたこと。