制限時間を待たず、所定の数のトレーには艶やかで真ん丸な鶏団子が整然と詰められていた。

「文句なしです! よくここまで上達しましたね。かもめ店は夏場は団子を出さないから練習できなかったでしょう?」

「アタシがみっちり教えたんスよ」

仕事の手を止め試験を見ていた矢部さんが誇らしげにアピールするので笑いそうになった。〝こうだよ、こう!〟しか説明できなかったくせに。

お葬式のようだった前回とは違い、精肉部の面々は嬉しそうに自分の仕事に戻っていく。船井SBも重ねて絶賛してくれたあと事務所に戻っていった。

「廊下で話を」

北条怜二が言えば、たったこれだけの台詞でも胸が壊れそうになる。
彼は何て言ってくれるだろう?
仕事から一歩踏み込んで、あの日のことも触れてくれるだろうか。
これで終わりになりませんように──。

願いを込め、先に立ってドアを開ける彼の背中を見上げた。今日は濃紺のスーツ姿で、紺色は彼に一番似合う色だと思う。願わくば、彼を間近に見つめ続けていたかった。

「お疲れ様です」

薄暗い廊下の照明の下で彼が微笑んだ。

「よく頑張りましたね。スコアは完璧でした」

「ありがとうございます」

「あとで正式なスコアを人事部からお送りします。おそらく格付に関しても何らかの決定があると思います」

褒められ認められて嬉しいのだけど、私が本当に聞きたいのはそんなことじゃない。