〝不合格なら関係を本物にする。そういうことにしましょう〟

もしここで私が不合格になったら、たとえ形骸的なものだとしても私の恋は延命できる。
でも私は彼の前ではちゃんと公私を分けられる、信頼される人でありたい。

トレーを並べる間に迷いを振り切り、準備ができたという合図を船井SBに送る。

「はい、では始めてください!」

ペダルを操作しながら挽肉をふっくら丸く切り取っていく。前回のような恥ずかしさはなかった。ここで働く人たちの凄さとかプライドに触れたから。だからわざと遅くたしたり汚くして不合格を狙うことはできなかった。

「速度、商品化の質、申し分ないです。特に商品化のレベルは素晴らしいです。これは美味しそうに見えますね」

船井SBの講評に笑顔を返した。北条怜二は前回と同じく、腕組みをしてただ静かに見守っているだけだ。でも顔には出ていなくても、ちゃんと認めてくれている気がした。

試験は鶏団子に移る。今では挽肉より得意だ。

「すごく綺麗です。ここまで綺麗なのは滅多にないです」

ストップウォッチで時間を計りながら船井SBが北条怜二に小声で説明している。

ほら、頑張ったよ。へこたれて不貞腐れたままにはならなかったよ。
こうやって合格しようと頑張っているのは、あなたとの関係を本物にしたくないんじゃない。あなたが私に課したことをちゃんと理解したって知ってほしいから。