「何ぼやっとしてんの! そろそろ時間なんだから粗挽きを出して準備しときなよ」
矢部さんの声で時計を見れば、いつの間にかもうそろそろという時間になっていた。粗挽き肉のバットをミートチョッパーにセットしていると、背後で扉が開いた。緊張と一緒に怖れに似た高鳴りで胸が音を立てる。
「……お疲れ様です」
入口に立つ彼の方に向き直り、顔を隠すように深々とお辞儀をした。一瞬しか視線を合わせることができなかったのは、そのほんの一瞬だけでマスクの下の自分の頬が真っ赤になってしまったのがわかるから。
「いよいよですね」
「はい」
不合格なら……というあの条件や口移しのことを思い出してしまい、仕事だとわかっているのにどんな顔で何を言えばいいのかわからない。
「お疲れ様です! SB船井です!」
続いて入ってきた試験官の大声が私の気まずさをごまかしてくれた。
人の良さそうな笑顔とは裏腹に一切手加減せずばっさり落とす人だということは前回で知っている。
「早速始めますか! 前回と同じ、挽肉から行きましょう」
「はい。よろしくお願いします」
タイプは違えど厳しい二人を前に、挑むのが好きな私は戦闘モードに切り替えた。
矢部さんの声で時計を見れば、いつの間にかもうそろそろという時間になっていた。粗挽き肉のバットをミートチョッパーにセットしていると、背後で扉が開いた。緊張と一緒に怖れに似た高鳴りで胸が音を立てる。
「……お疲れ様です」
入口に立つ彼の方に向き直り、顔を隠すように深々とお辞儀をした。一瞬しか視線を合わせることができなかったのは、そのほんの一瞬だけでマスクの下の自分の頬が真っ赤になってしまったのがわかるから。
「いよいよですね」
「はい」
不合格なら……というあの条件や口移しのことを思い出してしまい、仕事だとわかっているのにどんな顔で何を言えばいいのかわからない。
「お疲れ様です! SB船井です!」
続いて入ってきた試験官の大声が私の気まずさをごまかしてくれた。
人の良さそうな笑顔とは裏腹に一切手加減せずばっさり落とす人だということは前回で知っている。
「早速始めますか! 前回と同じ、挽肉から行きましょう」
「はい。よろしくお願いします」
タイプは違えど厳しい二人を前に、挑むのが好きな私は戦闘モードに切り替えた。