〝あと何本か、冷蔵庫に入れています〟

そうよ、彼がそんなことを言っていたような気がする。
しかし問題なのは、今日に限って冷蔵庫にチューハイがすらりと並んでいることだった。先日チューハイ二割引の日にまとめ買いしたやつだ。ポンジュースが入ったオレンジ味のこの銘柄が私は大好きで……ということはどうでもいい。

「見られたかな……」

そりゃ見られたに決まってる。他にはほとんど何も入っていない、コンビニの酒販コーナーのような光景なんだから。

「野菜室は一杯なのよ! そこ見てくれないと」

絶望感を凌ぐため意味不明な抗議をブツブツ呟きながら、彼が買ってくれたレトルト粥を温め、ありがたく食した。

食事を終えるとメモの訓示に従い、体温を測る。彼がわざわざ体温計を買ってくれたのだろう。

熱は三十七度。もう大丈夫だし気が進まないけれど、次は薬だ。
せっかく彼が夜間診療所にまで連れていってくだたんだもの。ちゃんと飲まなきゃせっかくの親切を無駄にしてしまう。というか、彼の達筆なメモには本人がここにいなくても言いつけに従わせる絶大な威力があるようだ。