「かなり疲れたみたいですね。まああの集団では当然でしょう」

彼が思い出し笑いのように軽く笑った。

「そもそもの始まりは私が嘘をついたからで……すみません」

「一度も嘘をつかずに生きてきた人はいないと思いますよ。たしかにつかなくていい嘘だったかもしれませんが、それは外野だから言える正論です。集団の中で身を守ってきたあなたなりの理由があったんですから」

「でも……中高時代、もっと違う人間関係を築けたんじゃないかって思うんです。何だろう……人は鏡って言うじゃないですか。私がもっと可愛げのある人間だったら、こうはならなかったんじゃないかなとか……」

「全部しっかりあなたの糧になっていると思います。この間教えてくれたことも」

この間……?
たぶんバレンタインの失恋話だ。

「だといいな……」

いつもの私みたいにきちんと喋れない。身体がやけにだるくて頭も瞼も重い。

「眠そうですね。着くまで寝ていてください」

「眠くないです」

私を寝かせようとする彼に抵抗して目をかっ開く。寝たらこの時間が終わってしまう。彼とこうして話せる最後の時間が。