「それ出向じゃなくて左遷でしょ」

「どうりで紺子の手、荒れてるなって思ってたー」

「ほんとだ」

でも友人たちは容赦ない。きっと明日には全員が知っているだろう。いや、この勢いだと明日ではなく今日中に知れ渡るはずだ。

「あれだけキャリアキャリアって言ってたのにね」

「もう名門企業勤務じゃないんだ? やだぁ可哀想―」

まるで鬼の首でも取ったみたいだ。普段の私ならあの結婚相談所バトルみたいに猛反撃できるのに、今の私は頭が重くて言い返すのも面倒になってきた。

「てか北条さん知ってるの?」

「実は、彼は──」

その時、私の声を遮るようにして背後から彼の声が響いた。

「紺子」

一瞬、眩暈がした。この時ようやく後悔した。

私のバカ、本当にバカ。
彼が完璧に辻褄を合わせてくれていたのに、それを水泡に帰すようなことをしたのだから。