それでも受付を済ませて会場に入る時、彼にリードされているのはとても心強かった。友人たちはみんな一様に汐里と同じ反応だ。それも彼は難なくやり過ごしてくれた。

乾杯や祝辞の間は大人しくしていたものの、同じテーブルにいる友人たちは新郎の観察が終わると次は北条怜二に照準を合わせてきた。とはいえ同席している男性の目があるので控えめだ。

「ねえ紺子。北条さんとはどんな馴れ初めなの? 社内っていっても何かきっかけがあるでしょ?」

彼からは事前に〝僕が質問に答えるのでなるべく黙っていてください〟と言われたので、私は料理が口に残っているふりをして彼に委ねた。

「僕たちが出会ったのは学生時代です」

ぎょっとして隣の彼を見ると、彼は涼しい顔で続けた。

「いわゆる合コンで」

やめてよ、その話は! 
彼は私ににっこりと笑いかけ、テーブルの上で固めた私の拳に手を重ねてきた。
傍目には愛おしげに見えるけれど実際は〝黙ってろ〟の意味だ。そうだとわかっているのに頬が赤らんでしまい、空いている左手でワインをぐいっと飲む。