***

一週間後。私と北条怜二は恵比寿にある瀟洒なレストランの駐車場にいた。
車から降りるや否や、彼は隣で硬直している私に鬼教官の顔で言い渡した。

「ここからですね。僕の肘に手を」

「…………」

唾の飲み込み方を忘れ、喉が変な音を立てた。
男性と腕を組むのは人生初だ。しかも好きだと自覚してしまったので、手のひらから好き好き光線みたいなものが出てばれてしまうのではないかと心配になる。

「そんなに表情が硬いと見抜かれます。嫌でしょうが、ある程度密着していればごまかせますから」

「いえ、あの、嫌と言うわけではないんですけど、まだ駐車場だし……」

「二択です。僕から手を繋ぎましょうか? あなたから腕を組みますか?」

「腕で!」

「どうぞ」

少し浮かせてくれた肘にそっと手をかけると、彼は脅迫めいた指示とは打って変わり、まるで恋人のような甘い顔で私を見下ろし微笑んだ。

「行きましょうか」

すごい変わりようだ。
ロボットのような動きで歩きながら内心で突っ込む。