彼の車のテールランプを窓から見送りながら、私はようやく心を解放した。

〝頭が固い。プライドが高くて使いづらい。まるで──〟

この半年間、彼の言葉の数々を思い出す度、私は息を止め目を固く閉じずにはいられなかった。単なる仕事上の叱責ならここまで傷つかなかった。
なのにどうしてこんなに痛いのか。
どうしてこんなに引きずってきたのか。

それは、その言葉を告げたのが他でもない彼だったから。
彼だけには周囲に謗られる私を見られたくなかったから。
私がずっと彼を嫌おうとしてきたのは、彼の前で私の鎧は何の意味もないことを本能的に知っていたからだ。

誰かを好きになることは、鎧を脱いで裸になること。今までの私はそれができなかった。

でも、彼は最初から私の鎧の内側にいたのだと思う。