「でも結果は公開処刑でした。ユーレイかよ、きもちわりぃ、って。クラス中に笑われました。ユーレイって、当時のあだ名です。昔の私はおとなしくて存在感がなかったので」

投げ捨てられ笑いの的になったチョコを拾って帰り、部屋で一人泣きながら食べた。私のせいでひどい目に遭ったチョコが不憫で申し訳なかった。

「その時に決意したんです。二度と踏みつけられるもんかって。ファッション部門を希望したのも、地味だった自分にコンプレックスがあったからかもしれません」

怪我の時も弱音を吐いてしまったし、彼の車の助手席って私には鬼門なのかもしれない。さすがに喋りすぎた気がして自嘲気味に笑った。

「でもちょっとやりすぎたみたいで……だから戦車なんて言われちゃうんですね」

彼の前で戦車の話をするのはショック療法のようなものだった。この人の前で思いきり傷を踏んづけたら、もうどんな痛みも平気になるかなって。

ずっと黙って聞いていた彼が静かに口を開いた。

「僕はあなたを戦車だと思ったことは一度もありませんよ。もちろんユーレイもね」

「……………」

バッグをぎゅっと握りしめた。
頑なに守ってきたものが溶け出そうとしている。うっすらと気づきながらずっと目を逸らしてきた感情が、否定できない強さで私を揺すぶっている。

自分が何を望んでいたのか初めて知った。
この人の、この言葉だったのだと。

「僕の目にはとても繊細な人に見えます」

ああ……もう駄目だ。