そうして一時間後、私はかもめ店から少し離れた場所にあるハンバーグ店で北条怜二と向かい合っていた。駐車場で彼と落ち合った時、何が食べたいかと訊かれて咄嗟に答えたのが古ぼけた看板のこの店だった。

「ハンバーグですみません……」

この人にハンバーグなんて似合わないのに。しかも店内は想像していたよりさらに古びていて、案内された席のシートは破れていた。

それより悲惨なのは私だ。
スッピンはもう仕方がないとしても、森田さんに勧められて──というか無理やり連れて行かれた作業着専門店で買った激安アノラック以下、トータルコーディネートだったのだ。
機能性は最高で、忙しい日に気合を入れるための勝負服なのだけど、いくら色気のない関係だとしても男性との食事でこれはない。

「ハンバーグは好きですよ」

彼はみすぼらしい店内にも私服まで労働者風の私にも特に反応はなく、テーブルの隅に立てられたメニューを開いて私の前に置いた。