矢部さんに怒鳴られながら鶏団子の作業を終え店頭に並べていると、刺々しい声がかけられた。

「この団子、高くない?」

声の主はクレームが多いと裏で評判になっているおばさんだ。化粧っけのない額がつっぱってピカピカ光っている。

「お鍋って野菜だけでも高くつくし、うちは男が四人もいるから豚バラとか鶏肉も入れるわけよ。たった八個の団子に三百円もかけてられないわよ」

「でしたら、あちらにお求めやすい商品がございますが」

既製品の棚に案内すると、おばさんは余計に怒りだした。

「これは不味くてだめ! 手作りじゃないし」

気持ちは大いにわかるのだけど、それが値段の差ってものなのだ。
それからおばさんは男四人の食事の世話がいかに大変か、自分は総菜パンが好きなのにここのベーカリーは甘いものが多いなどと様々な文句を私にぶちまけ、高いとブツブツ言いながら鶏団子を二パック選んでいった。

「すみません!」

お辞儀から顔を上げた途端、また声がかかった。今度も怒っているようだ。

「チラシを見て買いに来たのに、カレーの棚が空っぽなんですけど!」

「申し訳ございません! 少々お待ちくださいませ」

カレールーはドライ部の担当だけど、ここで私は担当ではないなどと答えてはいけない。急いでカレーコーナーに行くとやはり棚は空っぽで、同じように不満げな顔をした主婦たちに取り囲まれた。

「チラシ配っといて午前中に品切れってどうなのよ!」

そうよそうよと一斉に主婦たちが頷く。