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十月に入り、上半期店舗成績の速報が発表された。
かもめ店はお盆商戦の不振が響き、上半期は目標値に遠く及ばなかった。

毎日朝礼時には前日の各部門の目標達成率が読み上げられるのだけど、確かにこの半年間聞いていて、百パーセントに達していた部門はほとんどない。
今年は隣接スーパーが安価な輸入肉で猛烈な安売り攻勢を仕掛けてきて、精肉部も夏の主力商品のカルビなどが不振だった。

「やべーなぁ」

そう言ってヘラヘラ笑っている佐藤主任にあまり危機感は感じられない。

「毎年前半は苦戦して後半盛り返すんだよ。後半後半!」

「でもかなり深刻なんですよね?」

今朝の朝礼では店長が初めて全員の前で「廃店」という言葉を口にした。年末商戦が判断の鍵になるだろう、だから団結してほしいと。

「あーあんなの脅しだよ」

「でも今年は全部門かなり悪いですよ」

柳井君が眉を曇らせる。

「どうしてタママートは輸入肉の扱いが少ないの? 田舎で人口密集地でもないのにスーパーが四軒もあるなんて、苦戦するの当たり前よ。本部はかもめ店の立地条件をわかって言ってるの? 安売りもできないんじゃ対抗できないじゃない」

「うちの会長はグルメで、特に肉にうるさいんです」

「そうそう!」

 私の疑問に柳井君が答えると、佐藤主任も乗ってきた。

「視察に来る時は国産の厚切りサーロインをどっさり並べておかないと叱られるんだよ。一枚二千円以上するやつ、ここじゃ売れないのになー。あ、仁科さんってステーキ食べる人?」

「いえ、私はあまり──」

「仁科さん、鶏団子はまだ⁉」

いつものように矢部さんの怒声で部門ミーティングは即解散となった。