『恋愛映画とかあるじゃない。ドラマとか」

「いや……テレビも映画もまったく」

ずっと親にテレビを禁止されていたので、ドラマとは無縁だった。かといって一人暮らしになったら観るようになったかといえば、そうでもない。

大昔、クラスの人気者に憧れた末、公開処刑された。その後、少女漫画のような恋に憧れたのに海割り女になった。

私は不相応なものに焦がれて失笑されることを恐れるあまり、化石になってしまったのだ。だから努力を裏切らない確実なもの──勉強や仕事にしがみついてきたのだと思う。

「甘ったるい話で夢が見られないのよね。生まれつきのオバサン? あはは」

親友にもそんなことを言って乾いたキャラになりきってしまう。干物の戦車という不名誉なレッテルから抜け出したいと願いながら、実際は言い訳にしてしがみついているのだ。