「先日は見事な戦いっぷりでしたね」

何か言おうとしたその時、机の上に置いていたスマホがメール着信を知らせ、自然に二人の視線がそこに落ちた。

〝人気ナンバーワン! レンタル彼氏〟

いつも思うのだけど、メールの発信者名をスリープ画面に表示する仕様はよくないと思う。というか利用しないと決めたのだから、さっさとメール受信拒否にしておくべきだった。

「……………」

二人とも沈黙したまま画面を見つめること数十秒。
今さら隠したところで何の意味もないのだけど、沈黙に耐えかねた私は机上のスマホをおもむろに裏返した。

「……いったい何をしようとしているんですか?」

「あの……友達の結婚式があって、実はその……」

ここまで恥をかいてしまえば守るものもない。きっと私は北条怜二に恥をかき続ける星回りなのだろう。
ひとときの夢を見たいとかそういう乙女な理由ではないと弁明するため、友達に見栄を張って彼氏持ちだと嘘をついてしまったこと、友達から恋人同伴で結婚報告パーティーに参加するよう言われたことを明かしてしまった。

ただ、これまで一度も男性と縁がなかったとか、そういう余計なことは言わなかった。二十八歳でそれはあまりに痛すぎる。