「怪我の具合は?」

「おかげさまで、もうすっかり良くなりました」

右手をかさし、赤みが残っている縫合痕を見せた。まだ見た目は痛々しいのだけど、あの時立ち会った彼には気を遣う必要がなかった。

「一度化膿したそうですね。佐藤主任から伺いましたが、抗生剤の飲み忘れが多かったとかで」

「すみません……気合で治そうと思って……」

実は薬嫌いだ。彼はそれを聞いて「子供ですか」と呆れた顔をした。

「左手は?」

「大丈夫です」

左手も出して見せる。いつも擦り切れていた左手の中指の腹はあれから少しだけ皮膚が厚くなり、擦り切れることはなくなった。女子的にはあまり嬉しいことではないのだけど。

「手も順応するみたいで」

鑑賞向きとは言えない手を彼に見せていることに気づき、私は手を引っ込めて苦笑いした。

会話が途切れたので次に何を言おうか、どうやってこの場を終えるか焦り始める。でも北条怜二にまだ立ち去る気はないらしく、腕組みをして私の前の机にゆったりと腰を預けた。