「物欲しげにアプローチしたことなんかないのに。ねぇ、小次郎!」

電話を切っても気分がなかなか収まらない。
あの集団、昔はあそこまでひどくはなかったのに最近はいやらしさ全開だ。いいかげん付き合いとやめなければと思うのだけど、お祝い事だけに切りづらい。

「どうしよう……」

あの集団のことだから、欠席したら絶対に裏読みされて嘲笑の的になる。


日が傾くまで小次郎に付き合ったあと、またバッグに入れて自宅に連れて帰る。リクガメは紫外線を浴びなければ甲羅が丈夫にならないし健康を保てない。田舎に来て唯一ありがたいのは草むした空き地と公園に事欠かないことだ。

湯あみのあと小次郎が寝床に入ったのを見届けると、私は真剣に思案し始めた。切り抜ける方法は?

一つ、あれは嘘でしたと白状する。

「う……嫌だぁぁぁ」

ベッドに突っ伏して一人で呻いた。
たぶん疑われている。それであんな風に意地悪してきたんだから、ここで私が白旗を上げたら思うつぼだろう。

「意地でも白状するもんか」

そう、私はこんな奴だ。開き直って次の案を考える。

二つ、本物の彼氏を作る。

「それができないからこうなってるんじゃないの」

自分で突っ込むしかない。

三つ、代役を立てる。

「現実的にはこれよね……」

でもいったい誰がいる?
大学時代の学友男子はあの友人たちに面が割れているし、第一ずっと連絡もしていないのにいきなりこんなことを頼めない。そもそも演技力もなさそうだ。私もだけど。

グリム童話の「カエルの王子」みたいに小次郎がいきなり変身するとか、そんなおとぎ話は起こらない。とにかく二か月後の十月までに〝人間の男〟を調達しなければいけないのだ。