余震もまだあるなか玄関に出ようとしたが、部屋は箪笥が倒れ棚は崩れ、足の踏み場どころか立錐の隙すらない。 取り敢えず通帳やら印鑑やら入れた真っ赤なリュックを掘り出すように引っ張りあげて背負うと、立て付けの悪くなった玄関のドアを強引に開けた。 倒れたスクーターに鍵をさし、押しながら表通りまで来ると、ところどころ崩れた家から煙が立っているらしく、鼻を刺すような臭気がした。