いつも麻美子が気に入って首にかけていた、あの十字架のペンダントである。

銀の十字架は黒く変わり果てていたが、胸元の十字架を、一真は鮮明に記憶している。

この一事だけで、麻美子へ謝る機会を失ったことを、一真は悟った。