「……あと五分……延長」
「またですか?」
「いや……やっぱり……いい……」
「目覚ましに洗顔と歯磨きをしてくると言うのなら早くしてくださいね。一分だけならサービスして差し上げます」
「……ユウ君」
「なんですか?」
「……一分じゃ、歯磨きは無理だ。あと……朝食を……」
人というのは厄介な生き物だ。食事をとらないと死んでしまう。
栄養バランスが崩れても、睡眠不足に陥っても駄目。
全て時間を奪う動作。そんなものが必要なんて、なんて……なんて……贅沢な生き物だろう。
「わかりました。サービスは取り消し。五分ではなく、二十分の延長を致します。この間お母様が持ってきてくださった栄養満点おにぎりが冷蔵庫にありますので、そちらと牛乳を召し上がってください。家庭科室に行って作るのは勝手ですが、これ以上の延長は却下です」
「……了解」
止まっている時計の針を見た。意味のない動作だ。時間は全て、自分の中で管理している。
「もしも私がうっかりポーズを解除してしまったときは、朝食を中断して来るように。生徒達にはあなたのように、時間を操作する権限はないんですよ」
「分かっているさ」
「それでは、二十分間お寛ぎくださいませ」
「待って」