けれど質問レースは確かに嫌だ。身動き取れない椅子に座らされて、両手両足を拘束されている気分に陥ることだろう。その想像は顔にしっかりと現れていたらしい。


「嫌なら利害は一致しますよ。お互いの平穏な今の生活を守るためにも、秘密にしておきましょう」


 表情の返事のみで、彼女は勝手に結論づけた。元から同意であったため、反論する必要はない。

 この手は再び、彼女の引っ越し作業の手伝いへと集中した。私物へは極力触らないよう気をつけて、ベッドの組み立て、クローゼットの組み立て、時々手を貸して貰う。



 ――俺たちは明日から、皆に嘘をつく。



 警戒が薄い様子からして、おそらく彼女は気付いていない。

 抱えている秘密は、自分と交わした一つのものだけだと、信じている。

 今同室にいる、十歳近く歳の離れた青年が、自分に秘密を抱えている等と疑いもしない。

 まだ、知られてはいない。

 まだ――