佐藤先生の手が、頭の上に乗せられる。


「あえてここを選んだのは、気兼ねなく話せる家族だから。それは信憑性をあげる小さな欠片にはならないか?」

「それは……」


 デザートに夢中な母を見ると、信じたい気にはならなかった。


「……大体、なんで今になって私に紹介したの? 一生隠し通すつもりではなかったってこと?」

「ひゅうはひひょうははっへ」

「食べてから話して」


 佐藤の娘であることに常に自覚を持って生きなさい、と言っていた母はどこに行ったのだろうと、こういう姿を見せられる度に毎回思う。頭が痛い。

 冷水でケーキを流し込み、口の中に物を無くして母は言った。


「急な事情があったのよ。これ」


 どこからともなく取り出されたのは、一枚の紙切れ。