そこにはさっきのメイドたちが仕事をしている姿がある。


アランは大股でメイドたちに近づくと、とたんに大声を張り上げた。


「私が愛しているのはリリアただ1人だ!」


それは屋敷中に響き渡る大きな声だった。


俺はギョッと目を見開き、両耳をふさいだ。


耳をふさいでいても、アランのがなり声は聞こえてくる。


「私はリリアのために剣術を学び、食も気を付けている!」


アランの告白にメイドたちは一様に戸惑った表情を浮かべた。


そりゃそうだろう。


こんな大声でいきなり何言ってんだって、誰でも思う。


「君たちが思っているよりも必死だ。剣術は早朝、日の出前から行っているし、リリアが盗賊らに襲われた時には死ぬほど焦った! 冷静でいられるわけがない! 毎日死に物狂いだ! それでも私はリリアのことを愛しているんだ!」


アランは叫び終えると振り向き、そして笑顔を浮かべた。


白い歯が眩しくて思わず笑う。


そしてその瞬間、アランが相手ならまぁいいかと思ってしまう自分がいたのだった。